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足してダメなら引いてみる~FXトレードにおける引き算の美学~その4

結局のところ、過剰なテクニカル分析ツールを画面に表示させていたころの私は、マーケットと対峙し打ち負かそうという気でいたのかもしれません。そのためには、できるだけたくさんの武器がいると考えていたのです。

しかし、過剰に武装した結果、動きは徐々に鈍重になり、最終的にはまったく身動きがとれなくなってしまいました。

確かに、マーケットは生き馬の目を抜く戦場には違いありません。ですが、海戦山千の猛者相手に、そんな動きの遅いボンクラトレーダーが勝てる道理も無いのです。

スナイパーは、ライフル一つの扱いに精通すれば戦場でも生きていくことができます。
扱い慣れない重火器はかえって命を危険にさらします。

テクニカルの過剰な武装を解除した私は、その時々の戦況、つまりマーケットの状況を肌で感じるということの重要さに遅ればせながら少しずつ意識を向けるようになりました(他に頼れる武器もないのですから必死に値動きを観察するくらいしかできることがなかったというだけのことですが)。

そして、相応の授業料を支払った結果、マーケットと対峙し力でねじ伏せようとすることの無謀さも理解し、相場の流れに乗ることの大切さも痛感することとなりました。

勝つためには、もちろん分析は大事です。それなしでは、トレードは全くのギャンブルと変わらなくなってしまいますし、自らのトレードに優位性を見出すことも難しくなります。

ただし、一見完璧に思える分析結果が簡単に覆されることもあるのが相場だということを知り、謙虚な姿勢で相場と向き合うことが、生き残るうえで大切な心構えのひとつなのではないでしょうか。

もちろん、今でも毎回自分なりに優位性を検証した戦略を持ってマーケットと向き合っています。ですが、例えあるトレードで自分の戦略が機能しなかったとしても、一喜一憂することがないよう心がけています。

ひとつの勝ちトレード、ひとつの負けトレードも、自分なりのルールに従って生み出されたものである限り、等しく正しいトレードといえます。

「負けトレードでも正しく執行したのだからok」

そのくらいのおおらかさで日々のチャートと向き合っていると、ストレスなくトレードを続けることができるようになります。

「勉強したことは何でもチャートに反映させたい!」

確かに、それも人情でしょう。
私も経験者ですからその気持ちは嫌というほどよく分かります。

しかし、お伝えしたように、マーケットという戦場において、過剰すぎる武装は時に自分の動きを制限してしまいかねません。ひどい場合には、かつての私がそうであったように全く行動を起こせなくなることもあります。

・判断材料が多すぎていったい何が正解かわからない。

もし、今、そんなふうに感じているのなら、ためしに一度テクニカルインディケーターを画面からすべて消し去ってみてください。シンプルな裸のチャートで価格の値動きを追ってみることで、きっと見えてくるものがあるはずです。

足してダメなら引いてみる。そんな引き算の美学は、トレードの世界にもしっかりと生きています。(了)(執筆者:高橋 浩司)

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足してダメなら引いてみる~FXトレードにおける引き算の美学~その3

その後、テクニカル分析も決して万能なものではなく、状況に合わせて使い分けることの大切さを知り、また基本はやはり価格の値動きであることも感じて、トレンド系の指標、オシレーター系の指標それぞれひとつずつくらいでちょうどいいと思うようになりました。

売り買いの矛盾するサインが頻繁に現れるという状況も、結局は必要以上に分析ツールを表示させていたことから起こったものだったのです。

今にして思うと、当時の私は、トレードに「確実性」を求めていました。そして、テクニカル分析ツールの数を増やせばその分だけ、数パーセントずつでも確実性が上昇していき、最終的にはほぼ100パーセント勝てるような状態になれるのではないかと考えていたのです。

しかし、実際そう甘くはありませんでした

例えば、優れたアドバイザーを複数人雇ったとして、各人が常にいがみ合い、いつもそれぞれ真逆とも思えるアドバイスをされると考えてみてください。果たして、そのような状況で、ストレスなく適切な判断を行えるでしょうか。

10人の意見を同時に聞くことができたという、かの聖徳太子なら可能かもしれませんが、私にはかなりの難題に思えました。

そこで思い切って、テクニカル分析ツールの数を最小限に減らすことから再スタートを切りました。

はじめは、アドバイザーの数が減ったようで不安も感じましたが、実際に行ってみると、相場から矛盾したメッセージを受け取っていると感じる状況が減り、よりシンプルに価格の動きをとらえる感覚を得られるようになったのです。

やる気と希望に満ち溢れたトレーダーの卵たちは、みな熱心にテクニカルやファンダメンタル分析について知識を得ようと努力を惜しみません。

特に、実社会で成功してきた方や、勉強が得意な方の場合にこの傾向が強いと聞いたことがあります。

一般社会では、カリスマ性や人間的魅力によって周囲の人々に影響を与え、環境を自分の思うように変化させることで結果として成功へと近づくことができます。

その成功体験があることから、マーケットでも同じようなやり方で成功できると信じてやみません。

しかし、マーケットでは、個人が価格の値動きに影響を与えることはほぼ不可能で、素直にマーケットの動向や相場環境に従う以外に個人トレーダーが成功する道はほぼ皆無と言ってよいでしょう。

にもかかわらず、

「これだけきっちりと分析をしたんだから自分は間違っていない。不規則な値動きをするマーケットの方がおかしいんだ。」

などと原因を外に求めてしまうと、徐々に値動きを見る目が曇り、また、イライラが募れば、リベンジトレードのような感情的な売買を繰り返してしまうことにもなりかねません。そして、やがては資金が底をつき、マーケットから退場してしまうという定番ルートに乗ってしまう可能性が高くなるのです。(その4につづく)。(執筆者:高橋 浩司)

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足してダメなら引いてみる~FXトレードにおける引き算の美学~その2

このまま、矛盾した判断を下すテクニカルに頼ってばかりいても埒(らち)が明かない。チャートを眺め続けていたある時、ふとそんなことを思い立ち、思い切ってチャート上に表示させていたすべてのテクニカルインディケーターを消してしまうことにしました。

当然、画面上にあるのはロウソク足だけになりました。そこには、売り買いをサポートしてくれるものは他に何一つありません。しかし、今まで、これでもかと表示させてインディケーターを取り除いてみると、なんだかものすごくスッキリした気分でチャートと向き合えるような気がしたのを覚えています。

そこで、あることを思い出しました。

一昔前、カルネージハートというロボット育成シミュレーションゲームがありました。ゲーム内では、自作のロボットにさまざまな行動を割り振って、相手ロボットと対戦させ、勝利を目指します。

当時、私も自分なりに工夫を重ねてロボットを育て、一応ストーリーモードはクリアして、それなりに強いプログラミングのロボットを作った気になっていました。

ちょうどその頃、ある一冊のゲーム関連本の付録として、カルネージハート全国大会優勝者のロボットAIがついてくることを知り、どんなものかと書店で購入してみることにしました。

そして、早速、ものは試しとばかりに私が作ったロボットとその全国大会優勝者のAIとを対戦させてみましたが、まったく歯が立たず、ボコボコにやられてしまいました。

「いったいどこが違うんだろう。」

そう思った私は、全国大会優勝者AIのプログラミングを検証してみることにしました。すると、その内容は驚くほどシンプルで、行動パターンが数種類しか組み込まれていませんでした

一方の私はというと、様々な状況に対応できるように、ごちゃごちゃと様々な行動パターンをロボットのプログラミングに組み込んでいました

テクニカル分析の海に溺れそうになってあえいでいたとき、ふとこのことが記憶としてよみがえってきたのです。

「今の自分はあの時と同じことをしている。すべての相場状況に完璧に対応しようとした結果、逆にトレードに必要な判断力や柔軟さが失われてしまっているのではないか。」

そう思い、「できる限りシンプルに」と自らに言い聞かせて、インディケーターの数も3つまでと上限を決めて再びチャートと向き合うことにしました。

それまでチャート上に何種類ものインディケーターを表示させることに慣れていたため、当初は何だか物足りなく

「本当にこれでいいのか」と迷う時もありました。

しかし、そのようなスッキリしたチャートを観察することをしばらく続けているうちに、いままでインディケーターのサインを追うことばかりに気をとられて見えていなかった価格の微妙な値動きが何となく感じ取れるようになっていきました。そして、不思議なものでその頃から成績も徐々に上向きはじめたのです。(その3につづく)(執筆者:高橋 浩司)

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