120円台は既定路線? 市場のムードとアンカリング(思い込み)


ドル円は1ドル124円にタッチしようかという勢いで、次第に黒田発言以前の発言に戻りつつあります。円高への揺り戻しが思ったより浅かったことを受けて、某週刊誌には早速1ドル200円という文字が踊り、ロイターですら1ドル130円がどうのこうのというコラムが出てくる始末です。

もはや120円以下にすらなることが有り得ないようなコラムの数々を読んでいると、だんだんと120円台が前提かのように感覚が麻痺してきますが、これは「アンカリング」と呼ばれる、人間の意識が起こすミスリーディングの1つです。

例えば、目の前に2万円の商品ばかりが提示されるなかで、5000円のものがあったとしましょう。我々は「なんてこんなに安いんだ!」と思うでしょう。誰も適正価格が500円である可能性を考えることはしません。

市場でも同じことが起きます。原油価格は長らく100ドルを中心に90ドル-110ドルのレンジで動いてきました。このレンジが続いている間、誰も原油が50ドルを割るなんて思っても見なかったのではないのでしょうか。金相場も数年間に渡って延々と上がり続け、「1500ドルを割ることはない、いよいよ2000ドルが見えてきた」などという勇ましい声が聞こえた途端に暴落し、以来1200ドル前後で心肺停止しています。

もちろん商品先物と為替は違いますが、誰もが「○○は既定路線、まさかそうなるまい」と思い始めた時こそ真に注意です。

ドル円で言えば、昔ドル円が120円台から一転して100円を割った時、外貨預金をしている初老の男性がインタビューで、「こんなこと有り得ない」と答えていたのを未だに覚えています。その後男性がどうなったのかは分かりませんが、ドル円がどうなったのかは御存知の通りです。皆さんも市場の流れに飲み込まれないよう、常に頭のどこかで気をつけておいてください。(執筆者:大島 正宏)