日銀黒田総裁が口にした「実質実効為替レート」って何?


先週10日の衆議院予算委員会で民主党の前原議員の質問に答えて、日銀黒田総裁がっ口にした実質実効為替レートがここまで来ているということは、ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにないといった発言が物議を醸しています。

わかっていてわざと国会答弁で答えたのでは?

まあ巷では、発言が誤解されていると同情する声もあれば確信犯だという意見も聴かれますが、この人物は大蔵省で為替に長年関わってきており、市場に何を言えばどうなるかは最もよくわかっている人のひとりです。

通常は日銀総裁に為替について発言する権限はなく、財務大臣だけが国を代表してものを言える立場なわけですが、国会の質問には回答せざるをえないのがどこの国でもある状況でこういうときにぽろりと本音がでて市場を混乱させることは欧州をはじめとして先進国では結構あるものなのです。

しかし、今回の場合は国会での答弁を利用してもっとも効果的な口先介入をしたのではないかと個人的には思っております。

実質実効レートについて正確に理解しているのは一部の為替関係者だけでこうした発言が安易に英訳されてヘッドラインを踊ればあきらかにアルゴリズムが反応して大幅下落になるのは、ちょっと為替相場に精通している人間ならばだれでも想定できる話です。

前原氏がうまく話しを引き出したという説もありますが、そうではなく国会答弁を逆利用して効果的口先介入を実現したのではないでしょうか?その後黒田総裁はなんら答弁を修正しようとはしておらず、市場全体がはめられた感じがしてなりません。その後の効果は絶大で、上方向では124円にすら簡単に戻っていない状況です。

大体実質実効レートって何?

この実質実効レートについて日銀ではホームページでこのように解説しています・・

実効為替レートは、特定の2通貨間の為替レートをみているだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標です。具体的には、対象となる全ての通貨と日本円との間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウエイト付けして集計・算出します。

まあこれでもわかったようなわからないような内容ですが、複数の通貨を利用して相対的に通貨が高いか安いかを測定するための指標というのがごく簡単な説明といえます。

実質実効レートは相対的な国の隆盛を示すだけか?

この実質とか実効といった言葉で脚色された数字ほど、計測期間と計測対象、計算方法によってぶれまくるものはないのです。たとえば2つのベンチマークになっているうちの実質レートに関して言えば、インフレ率といっても国によって計測方法が異なりますし、コアなのかコアコアなのかによってもまったく物価体系の捕らえ方が異なるわけです。

さらにそれが特定の産業や企業の競争力に与えるインパクトはまったく一様ではないのです。

一方実効レートを計算する場合、対象とする国をどこにするのか、貿易全体を見通すBIS方式で算定するのか、輸出だけを見る現在の日銀方式にするかで通貨間ウエイトはまったく異なることになり、しかもこのBISが開示している実質実効レートには対象国を絞ったものと幅広く設定したものがあり、どこまで参考になるのかはよくわからないというのが実情です。

一般的に言って実質実効為替レートが上昇しているのは新興国と資源国です。つまり国力の隆盛を示しているとも言えます。とすれば、低成長、少子高齢化に悩む日本の通貨の価値が1995年以降相対的落ちていることは間違いなくても、今後日本円は諸通貨に対して戻るはずとかドル円レートは行き過ぎと本当に言えるのか?かなり微妙です。

つまり、結論から言えば、国会の答弁でぼろりと発言して、ああそうですかという内容ではないことをあえて口にして煙に巻いたまま円安けん制だけは実現させたのではないでしょうか?

まあいずれにしても逆バズーカでやられたという感の強い一週間でした。 (執筆者:坂本 博)