5月18日のECBクーレ発言はECBによる確信犯的行動か


みなさんご存知のとおり日本時間の5月19日午後3時過ぎにECBクーレ理事が夏の閑散期の訪れる前にECが資産購入プログラムの実行を前倒しに行うと語ったことが報道されていきなりユーロドルは100ポイント以上大幅下落することとなりました。

しかしこれは当日の朝に語られたものではなく、18日にロンドンのバークレーホテルでヘッジファンドの関係者を招待して行われたディナーでのスピーチであり、投資コミュニティとの対話という役割は果たしているもののヘッジファンドだけに先行してこうした情報が提供されること自体、市場への機会均等の原則から著しく逸脱しているとの非難が高まっています。

ECBは公表遅れの手違いを認めながらもチャタムハウスルールの適用対象を主張

ECBはこの件について手違いから公表を遅らせてしまうことになったとして、非を認めていますが、その一方でこれはチャタムハウスルールの適用対象で本来公表すべきものではないとも主張しています。

チャタムハウスルールって何? という話になるわけですが、これは会議の参加者に遵守が求められることがあるルールの一つで、UKのシンクタンク、チャタムハウス(王立国際問題研究所)で採用されたことに由来するものだそうです。

チャタムハウスルールの下では、参加者は会議中に得た情報を外部で自由に引用・公開することができるが、その発言者を特定する情報は伏せなければならないという不文律に基づいているのです。

明らかな作為的利益供与か?

しかし、シンクタンクやマスコミの報道取材などではこうしたオフレコ対応というのはありうる話かも知れませんが、事は投資にかかわる問題であり、この発言のおかげでユーロは暴落、債券相場と株価は上昇したわけで前日から知っていたヘッジファンド勢だけが儲かって、ほとんどの欧州各地の投資家は大損をする事となったわけです。

これはこの会議を利用してわざとリークがでることを想定したECBによるユーロ高・債券価格けん制政策の確信犯的行動だったのではないか? という憶測が出回りはじめています。

この手のコンプライアンス違反にきわめて近い行動をクーレ理事の独断だけではやれるはずがなく、しかもユーロドルが1.15手前ぎりぎりという6週間連続上げの段階で出されたタイミングについても絶妙で、ユーロの大幅上昇をけん制するのが狙いのECBによるやらせ説が濃厚になっています。

前倒しの話は実はたいした情報ではない?

ところで冷静に考え見ますと、今回のクーレ発言は実はたいした内容ではないことがわかります。

夏枯れ対策で前倒しにQEを行うというのは別に金融緩和の実額を増やすというわけでもありませんし、驚くべきことでもないのです。

したがってこの発言の賞味期限が問われるのが5月最終週から6月第一週の雇用統計にかけての市場の反応ということになりそうです。

今のところユーロはギリシャの件もあって続落状態ですが、大幅ショートカバーに対する調整の先にさらなる調整が加わって1.12方向に動き出すのか、そのまま続落することになるのかが注目されるところです。

ECBのQEの効果から欧州市場の経済は回復基調にあり、今後QEを加速させる必要自体がなくなっているとも言われます。また4月の債券相場の急落で多くの投機筋がかなり含み損を抱えているとも言われ、果たしてECBの思惑通りに市場が動くのかどうかにも疑問が投げかけられています。

いまや各国の中央銀行の動きや画策が市場を大きく揺るがす時代に入ってきていますが、本当にこんなことでいいのか?という大いなる疑問を感じる5月の末です。(執筆者:坂本 博)