ドルインデックス100を超えても上がらないドル円相場はなぜ?


 要注意! ドル円だけから市場を見ていると天動説と地動説ほど相場を見誤る可能性あり

 為替市場はドル一辺倒でドル高相場となっています。しかしドル円だけでみると一旦122円をつけてからはそのまま停滞しており、124円方向は目と鼻の先なのに簡単には上がらなさそうな雰囲気になっています。日経平均はすでに1万9000円を超えましたが、ドル円は株式相場にも連動する気配が感じられません。これは一旦どうしてこんなことになってしまっているのでしょうか?株と為替の連動はもはや切れたのでしょうか?

 国内の個人投資家の8割はドル円をベースにして為替市場を見ていますが、相場には必ず旬の通貨があり、その通貨が市場を動かしているのです。この視点で相場を見ませんと大きく読み違えることになります。

強いドルの背景は明らかにユーロの存在

 今市場は強いドルとして捉えられていますが、その背景には弱いユーロの存在があるのです。QEの実施でユーロ圏の債券市場は軒並み利率が低下し、米国の債券よりも低い利率の国債がEUの多くの国で示現するようになっています。またギリシャ問題も嫌気されており、多くのHFを中心として投機筋はユーロドルがパリティとなることをすでに織り込みはじめています。ですからほとんどのドルストレートはドル高となっているのです。これが強いドルの主な原因となっていることは間違いありません。

ドル高だけれども円安ではないところが大きなポイント

 しかしここで気をつけなくてはならないのがユーロ安を背景としたドル高ではあるものの、円安ではないということです。それが証拠には3月第一週ほとんどのクロス円は円高方向に振れておりまったく円安を示現していないことに現れています。したがってユーロ安でユーロ円が安くなるとドル円はユーロ円に引っ張られて下げになる局面さえ見受けられるようになりました。つまりユーロ主導のドル高なれど円高でもあるので結果としてドル円は動かないのです。

日経平均とドル円が連動しなくなったのは株の買い付け主体が大きく変わったから

 2012年末からのアベノミクススタート時期には、デフレ対策の株高、円安という国の政策にいち早く海外の投機筋が乗ったことが株価の押し上げとそれに連動する円安を実現されることになりました。つまり外人投機筋は円で資金調達し日経平均先物を買い上げそのヘッジとして売却時のドル転のために連動してドル円も買い上げたのです。2013年はほぼ年間15兆円が海外投資家の買い上げ額で、その半分はHFの買い上げですから見事に日経平均とドル円はシンクロすることになりました。

 しかし2015年、株式投資の中心は日銀のETF買いとGPIFをはじめとするくじら軍団の株買いで一方日銀は年初から既に5000億円超のETFの買い付けを行っており、その額はさらに増加中です。信託銀行による年金勘定の買い付けも9000億円近い買い越しであり、GPIF主体の国策連合だけで1兆3230億円以上の買い越しを実現しています。これにあわてたのが1月2兆円弱の売り向かいをしていたヘッジファンド勢で、2月後半には一転買いを進めて現在ほぼ2兆円程度の買い向かいを日経平均先物主体で行っているのが実情です。ただ為替は安定していますので、こうした買い向かいのヘッジのためにドル円はすでに買われなくなっているのです。つまり国内の官製相場買い上げ軍団の存在が米国のダウの下落にも連動しなくなっているのが実情で、為替とも連動していない大きな理由といえます。

 今年年金系がポートフォーリオの改定でほぼ20兆円程度の株が余力を見せていますし、企業の自社株買いも4兆円規模が見込まれます。こうした資金は利益が出た段階でのドル転を必要としないため、今後ますます日経平均の上昇はドル円と連動しなくなることが容易に想定されます。

ドル円は年金関連が外貨建ての債券購入のためロンドンタイムになると購入して上昇

 2月以来顕著に見られたのがロンドンタイム初頭のドル円のいきなりの上昇です。これはこの時間帯にGPIFをはじめとする年金が外貨建ての債券を購入するために流動性の高いロンドン市場でドル円を買うからで、突如として跳ね上がる光景が2月から頻発しています。こうした動きも積極的にドル円を買い上げはしないものの下値を支えているといえます。連動はしないものの円高には戻させない、政権と日銀の策略が垣間見られる状況といえます。

春から夏以降にかけてドル円を上げたくない日米の事情が連発の気配

 4月の統一地方選挙対策で株価は上げたいが為替はあげたくない現行政権の思惑がそのまま相場に現れるようになっています。また夏以降は来年の大統領選挙に向けて米国で各政党から強いドル高をけん制する発言が登場することが予想されていますが、ユーロに対しては中央銀行も含めてかなり容認の姿勢が強まっており、矛先はもっぱら日本円に対して向けられる可能性が高まっています。とくに米国での日本車の販売増に国内メーカーがいらだちを持っており、これまでもトヨタの利益が過去最高を示したあとには必ず円高になるといった状況が繰り返されていることを忘れてはなりません。

 こうした状況を丹念に読み解いていくと今の市場がなぜこのような状況になっているのかを理解することができるのではないでしょうか。そして次にいよいよ迫っているのがFOMCということになります。ここから先ドル円がどういう動きをすることになるのかにも注意が必要となります。ドル円と日経平均、ダウの関係は現状では連係しなくなったように見えますが、株の下落局面では突然連動感を強めることになりますし株が下がればドル円が下がるのも3月のNFPの結果の相場の動きを見ていれば一目瞭然です。連動感のない今の状況だけで将来を判断するのはきわめて危険といえます。(執筆者:坂本 博)