既に各国中央銀行の利下げは32カ国に~この先通貨安戦争はどうなるのか?


 ECBの量的金融緩和実施を目前にして各国の中央銀行は一斉に利下げによる緩和措置を取り始めており、既に32カ国が利下げを実施しています。

 そんな中で2月3日、大方の予想に反してオーストラリアRBAがその政策金利を0.25ベースポイント下げて2.25%とし、即日実施し、豪ドルドルは5年半ぶりの大幅安となりました。本来は声明文を変更し、その後に利下げを想定していたのが市場の見方だったため、思わぬ利下げは市場を結構驚かせることとなったわけです。

 スティーブンス総裁は昨年末から、中央銀行としては異例の為替レベルの期待値に関して言及するようになっており、対米ドルでは0.75ドル付近にあるべきであると発言し、今回安値の0.7625ドルまで下落したことで一応の目標達成を図った格好となっています。

 しかしこれでなんと32カ国以上の国が金融緩和と自国通貨安政策に乗り出していることになり、世界的な通貨安戦争が一層激しさを増す状況となっています

TPP加盟国は条約締結を睨んで通貨安を急いでいる?

 そんな中でも豪州RBAが利下げを加速させているのは、一説には交渉が進むTPP対策ではないかという憶測が流れはじめています。これはTPPの条約締結時に為替条項が組み入れられる可能性が高まっているからで、この条項が入りますと、TPP参加国は為替介入や通貨安誘導が出来なくなることが明白となるからなのです。

 したがってTPPの締結がよりはっきりしてくるとほかの加盟国も一斉に利下げなどのアクティビティに動くことが予想されます。日本の日銀による金融抑圧政策は果たして円安誘導ではないのかが大きな問題となりそうですが、TPPは思わぬところで為替に影響を与えることになりそうです。

為替はゼロサムゲーム すべての国が通貨安にはならない

 為替は通貨同士の相対的な位置関係から高い安いが決まるものですから、いくら各国中央銀行が金利の引き下げで切り下げ誘導をしようとしてもすべての通貨が安くなるというわけではありません。しかも皮肉なことに通貨安政策を採っているにもかかわらず、ほとんどの国が原油価格の下落から輸入物価の上昇率を大幅に下げており、ことごとくディスインフレ寸前に陥っていることも金融政策をうまく機能させられない状況にあるのです。

 したがってさらなる緩和政策に出るところと政策的に失敗に陥る中央銀行も登場することが予想され、この緩和競争の落とし所が危惧される状況です。通貨ペアを選択する場合にはこうした中央銀行の政策についてもしっかりチェックをすることが肝要になりそうです。(執筆者:坂本 博)