スイス中銀ショックで国内個人投資家にも損害を与えた「値飛び」とは?


 スイス中銀の対ユーロ無制限介入解除の声明がでてから2週間あまりの時が経過しましたが、国内でもやはりこの件でFXにより損失を被った個人投資家が登場し始めています。しかしその損失の出し方が実は驚くべきものに起因していることが判明してきているのです。それが『値飛び』という現象によるものなのです。

値飛びって文字通り値が飛ぶこと…

 まあ文字を見ていただければ値飛びといえば値が飛ぶことぐらいはどなたでも理解できるものと思いますが、それがFXの取引と何の関係があるのかすぐに想像できる方は非常にすくないと思います。実は、スイスフランの暴騰が起きた時に国内の店頭FX業者でのユーロスイスフランの通貨ペア取引にこの値飛びが発生し、個人投資家が多額の追証を求められることとなったのです。今回は具体的にこの状況をご説明したいと思います。

カバー先のインターバンクからの価格提示が大きく飛ぶのが値飛びの最大の原因

 通常通貨ペアの売買価格というのは売りと買いのスプレッドが大きく離れるという、いわゆるワイドスプレッドの状態が経済指標の発表や突然の市場の変化などにより現れることは誰もが経験するものですが、今回のスイスフランの暴騰ではFX業者が提示する価格が大きく跳んでしまい、あらかじめ設定しておいた逆指値や強制ロスカットのポイントを素通りして、はじめて提示された価格が大幅に下回るところに値がついてロスカットとなったケースが続出してしまったのです。

 上の図をご覧いただくとわかりますが、通常通貨ペアの価格は急激に下落をしても図の左の青い矢印のように常にその数字が表示されて下げていることになります。したがって損切りのための逆指値や業者が設定している強制ロスカットのラインは通常ならば必ず通過することになりますから少なくともこのどちらかが機能すれば、国内のFX相対取引でも証拠金を超える損失がでるということが考えられないはずです。

 ところが今回のケースでは業者が提示した価格はこの図の右の赤いラインのようになり、まず、ユーロスイスフラン買いのための指値は通常どおりつくことになり、その直後の比較的指値に近い価格での逆指値(たとえば30PIPS程度下)については一応機能したようなのですが、それを超えたところにおいた指値は値飛びの発生で完全に飛び越えてしまい、さらに業者自身が設定している強制ロスカットで本来損切りすべきポイントも素通りしてしまっているのです。

 結果としてこの図のように1.01が下落後はじめてこの取引で提示された価格であるためこのポイントが損切りラインとなってしまい、多くの個人投資家が証拠金不足に陥り追証を求められる結果となってしまったのです。

 おそらく逆指値で万が一の暴騰の場合にスイスフランを買おうとして逆指値をおいていたトレーダーの場合も1.2に近いところはついても少し離れたところにおいたものはつかなかった問題も起きているはずです。しかしこの場合は完全に逆指値を突き抜けていますから、業者は逆になんとしても支払をせざるを得なくなっているはずです。

価格を提示しないのはFX業者自身の問題

 確かにカバー先のインターバングがプライスを出してこなくなったことが、こうした値飛びの大きな理由ですが、NDD方式で全てをカバー先に委ねる方法をちらずにDD方式で社内にディーリングデスクがある会社ならばまったく価格を出せずに190PIPS下ではじめて価格を提示したといわれても全く納得の行く話しではありません。こうしたことから払う払わないの問題が生じることとなっているのです。

 国内ではこうしたケースが裁判になったこともあるようで、一部ではFX業者が敗訴した事例もでているようです。確かに故意なのかまったくのコントロールできない事態なのかはかなり微妙なものであることは間違いありません。しかし多くの個人投資家は追証を入金して事なきを得ることとなっているようで、かなりこたえているトレーダーが多いのが実情のようです。

具体的な対策はあるのか?

 こうしたことに巻き込まれないためには一体どうしたらいいのでしょうか?

 一つは指値にかなり近いところに損切りの逆指値をおくことが考えられます。今回のケースでも価格が暴騰した走り始めにはプライスがでていたことがわかっています。しかし、そんな稚拙なことで対策になるのかと言われれば確かにかなり心もとない方法となることは事実です。指値も逆指値も切れるかもしれない命綱であることは相当しっかり認識しておく必要がありますし、危ない通貨ペアは取引しないという基本的な対策しかないのが現状です

 しかしこうした値飛びという驚愕の状況が起こることはこれまで殆ど知られてこなかったことですから、とにかくその事実だけでも正確に理解しておいていただきたいと思います。(執筆者:坂本 博)

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